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『もぐらのグラボー』復刊にあたって。

                                                発行元 (株)新栄堂書店
                                                代表 柳内 崇 (やないたかし)

この度、実業之日本社様のご協力のもとに、『もぐらのグラボー』を35年ぶりに、弊社発行元として復刊する事になりました。ストーリー展開は『のどかに暮らしていたグラボーが、ビル開発のために住む場所を追われ、ついに安住の場所を求め、ホッとする』という、いたってかんたんなものです。ただ、なぜか印象に残るのです。私自身、幼い頃読んだこのグラボーの思い出が、、、、、
半年ほど前のこと、休日にぼんやりとNHKのテレビで、もぐらの生態についての番組をみていました。その時、あーそういえば、昔もぐらの絵本があったけど、あれどうしたかな?さいきん児童書売場でみかけないな―というところから始まり、検索したらなんと、ぜ、ぜ、ぜっぱん。

この絵本の特徴は、
1、グラボーとパワーシャベルの対比―絵のすばらしさ
もぐらは小さいです。特に、測量の棒がグサリとささる場面は、ヒトの靴の大きさとくらべて、
グラボーのサイズが、いかに小さいかを知るところでしょう。グラボーの手とパワーシャベルの破壊力の対比もまた見事です。さらに牧場のおじさん、つまり人間が地上から見る地面とグラボーが見上げる地上世界とのコントラストも、色使いの鮮やかさを伴い、見事に表現されています。

2、自然蘇生と都市環境を考える
最近マスコミで報じられるクマの被害は、人間の環境破壊が原因とされています。もぐらが掘り起こす地下活動は蘇生可能ですが、人間の活動は取り返すのが難しそうです。しかしこの絵本は、あまり環境破壊や人間否定を全面に出した描き方はされていません。極めて嫌みなく牧歌的に描かれているのは、著者であるルイズ氏がどこか、否定からでは始まらないなにか、気づきー気づかせることの大事さで、人間と動物との共生を願っているようにも感じられます。これが35年前にd作られたとは驚きです。

3、幸せの価値観の提供
『なんてきがやすまるんだろう、なんてきもちがいいんだろう』ハレとケ。オンとオフ。日常と非日常。極度の幸運的な(時に金銭的)感動、あるいは極度の他者悲劇との相対に目をとらわれしあわせを感じられなくなっている現代。毎日の生活の中で得られる、ささやかなしあわせを、いっぱい感じること。孤独にもめげず新天地を目指すグラボー。めちゃくちゃ感動的にも、また、はちゃめちゃ悲劇的にも仕上がっておりません。ですが『なんかいいねー』そんな気がしてきませんか??

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                                                  平成18年12月吉日
              ―いつものふつうがいちばんしあわせ―