本を通じて地域の知的生活向上に貢献し
人の歴史と未来の足取りに寄与します

『みつやくんのマークX』復刊にあたって。

この度、弊社発行第2弾として、『みつやくんのマークX』を復刊することとなりました。すでに絶版になって20年、多くの読者より復刊の期待の声が寄せられておりました本作品。主人公のみつやくんが、自分の部屋のデスクにおいて、水・陸・空、兼用自動車を想像し、夢のようなスーパーカーを創造する物語です。読者ターゲットは4?9才までの男の子とそのご両親で、読み聞かせ?ひとり読み、まで、何度もくり返して愛用される一冊と自負しております。私自身も幼い頃より愛読して、弟と取り合いとなっても、なお中学生になっても読み続け、母親より、いい加減にしなさい、と諭された記憶があります。

以下に、本作のすばらしさをご説明申し上げます。この度の発行は、前発行元のあかね書房様のお力添えと、前回の『もぐらのグラボー』と同様に発売元として実業之日本社様のご協力を頂いております。どうぞ宜しくお願い申しあげます。

1、(子どもとのりもの) 作家 故 渡辺茂男様
昨年末、日本の児童文学に大きな功績を残された、渡辺茂男先生が亡くなられました。手がけた児童書の翻訳や創作作品は数多く、書店店頭でお馴染みのものも多いでしょう。本作は今から34年前に作者の次男、光哉氏をモデルに書かれた意欲作です。あとがき(子どもとのりもの)では、先生の子供の立場に寄り添った着眼点、発想の原点が書かれています。さらにそこには、子が親に抱く愛情欲求というべきものが、親の視点から優しく脈々とながれております。著者曰く、遊園地で始めて電動自動車に乗って、『ハンドルを動かし動かし、やっとひとまわりするころには、それはもう得意で得意で、親の笑顔が眼にはいると、みてよ!みてよ!とさけびたいほどのうれしさだったものです』と。先生の生前のご活躍と児童文学への理解は、新潮文庫『心に緑の種をまくー絵本のたのしみ』渡辺茂男・渡辺鉄太著 に詳しくあります。

2、(なつかしい未来) 画家 エム ナマエ様
全ページに挿し絵が入っている本作。作家と画家のベストマッチと言えるべき本作の絵が、今は全盲で奇跡のイラストレーターとしてご活躍のエム ナマエ氏のデビュー作になります。独特で繊細な色使い、リアルでありメルヘンな感じが読み手の想像を膨らませ、本当に実現できるのではないか?という錯覚に陥ります。打ち合わせで驚かされたことは、失明されて21年経った今でも、ナマエ先生の中で純真に、全ての挿し絵が鮮明に描かれていることです。かつて多くの読者がマークXの飛躍と自分を重ねたように、あとがき(なつかしい未来)で曰く『永遠の恩師、渡辺茂男先生と、その教え子、若きエム ナマエが手を取り合って生み出した夢の自動車が、再びスタートラインでエンジンを始動させるのだ』と世紀を越えた復活に、今またナマエ様自身も運転席に座ったようです。先生の最近のご活躍は http://www.emunamae.com/ で拝見できます。

3、仮説、実行、検証―ヒトの可能性を広げる。
本作品の特徴は何といっても、少年の小宇宙、広がる想像力です。みつやくんがのびのびと、一台のモデルカーからマークXを作る過程、子供部屋から野山を越えて湖に降りる冒険、は誰でも夢に描きそうで、しかし誰も実現できそうにない。そういう意味で、本作品はプラン・ドゥ・シーの思考過程を自然に体得できる格好の教材と言えましょう。さあ、皆さまこの『みつやくんのマークX』と共に、夢と想像を広げましょう。

                                                  2007年5月